いつもブログをご覧いただきありがとうございます。
勉強法第6回となりました。
本日から「立体化学」に突入します。
第2回でお伝えしましたが、立体化学も頻出(というか出題率100%)範囲です。
ポイントは以下の3点でしたね:-P
①不斉炭素を見つけてRSがつけられる
②言葉の定義がわかる
③様々な立体構造の表し方
頭の中で立体構造をクルクル回転させて問題が解ける方は、②を押さえておけば終了でしょう。
しかし、「手前?奥??単結合を回転???ムリ~~~」となる方は、かなり厳しい戦いになります・・・
しかしながら、そういった方でも、問題を解く時間が少しかかりますが、①の「RSをつける」ということと、③の「構造の書き換え」という2点を徹底することで、「頭の中でクルクルする」という作業を極力減らすことが可能です。
手強い範囲ではありますが、内容を超厳選して立体最重要内容を3回で終了させますので、一緒にがんばりましょう!
不斉中心を見つけましょう
まずはこちらの問題です。
第103回問7です。
「こんな問題出来るに決まってるでしょう」となる方がほとんどだと思います。たしかにこれを国家試験本番で“誤答”するのはもったいない完全なサービス問題です。
ただ、この問題を使って学べる点は多いです。ゆっくり進んでいきましょう。
初めに、問題文にある「不斉中心」という言葉は大丈夫でしょうか?
・・・
大丈夫ですね!
“不斉中心=4方向に別の構造が結合した原子(主に炭素原子)”です。
なお、国家試験では基本的に不斉“炭素”しか出ません。炭素以外で過去に出題されたのは不斉“硫黄”です(100回のオメプラゾール、109回のスリンダク)。
硫黄は4方向のうち一つが“ローンペア”です☺医薬品添付文書の構造を確認すると「及び鏡像異性体」とあるため、R体S体が存在することが分かります!
不斉炭素の話に戻りますね☺一応、図にしておきます。
これくらいの構造なら問題ないのですが、複雑な構造になると不斉中心が見つからない時もありますので、ちょっと細かく見ます。
不斉中心になっているかどうか判断しにくい場合は、隣の原子を一つずつ追っていきましょう。違いがあれば「別の構造がある」ということになります。
RS配置を決めましょう
不斉中心が見つかれば、次にRS配置を決めます。
不斉中心は4方向に別の構造が結合しており、結合の仕方によって、立体的な違いが生まれます。それが「RS配置」です。R配置の構造はR体、S配置の構造はS体と呼ばれます。
RやSの決め方は、一般的に「自動車のハンドル」に喩えられます。ハンドルが右に回れば「R」、左に回れば「S」です。
この時、最初に決めなければいけないのが、不斉中心に結合している構造の“優先順位”です。1~4位まで順位をつけます。方法は「原子番号順」です。こんな感じ。
不斉中心を決める際の図に、少し付け足しました。優先順位は不斉中心にくっついている4つの原子の原子番号を確認し、原子番号が一番大きいものを1位、次が2位、その次が3位、最後が4位とつけていきます。
上の図では、緑枠のO(酸素)が1位、黄色枠のH(水素)が4位、そして青枠とオレンジ枠のC(炭素)が同順です。もし同順の場合は、次の原子に進むだけ。青枠の場合はH(水素)しかありませんが、オレンジ枠の場合はC(炭素)があるため、青枠が3位、オレンジ枠が2位ということになります。
では、ここで決めた優先順位からRS配置をどのように決めるかです。
構造の破線(‐‐‐‐‐)は奥に伸びている結合です。図のように、優先順位4位を奥(破線)に置いた時、残りの1~3位が右回りなら「R配置」、左回りなら「S配置」です。これが基本です。
では、優先順位4位が奥(破線)ではない場合はどうでしょう。
ここからは本来、「頭の中でクルクル問題」が発生してくるのですが、機械的にいきます。
先ほどと同様に優先順位をつけると、4位が手前(太線(以下くさび))にあり、残りの1位~3位が右回りです。この時、ハンドルに見立てるとすると、4位を奥(破線)に持っていく操作(頭で構造をひっくり返す)が必要になります。
これが難しい場合は、“4位が手前(くさび)の場合、1位~3位が右回りは「S配置」、左回りは「R配置」”と機械的に覚えておきましょう。手前と奥をひっくり返すので、結果が逆になるわけです。
では最後に、優先順位4位が奥(破線)でも手前(くさび)でもない時(すなわちただの棒線で書かれている時)、どうしたら良いでしょうか。
この場合は、基本的に構造をクルクル回す必要が出てきます。
しかし、国家試験は易しさなのか何なのか、基本的に優先順位4位が手前か奥にある場合しかRSを聞いてきません(ゼロではないです。以下の記事参照)。もしくはRSを求めなくても回答が出せる問題になっています。
それでは第103回問7をもう一度確認します。
同じように優先順位をつけてRSを決めると、選択肢5のみ「R配置」ということがわかります。
解答出ましたのでとりあえずOKなんですが、せっかくなのでこの問題を使って他の重要点も確認しましょう!
RS配置から何がわかるか
この問題では、選択肢1~5の不斉中心に結合している構造は同じです。さらに、不斉中心の立体配置が、選択肢1~4は「S配置」、選択肢5のみ「R配置」ですから、選択肢1~4は全て“同じ化合物”、選択肢5のみ“立体配置が異なる化合物”と言えます。
「え!選択肢1~4が同じ化合物ですか????」
と思われた方、そうなんですよ。“頭の中で構造クルクル”すると、全部一緒なんです。
なので、この問題が“R配置どれ?”ではなく“異なる化合物どれ?”みたいな問題だと、解けない人出てくるかもしれないですね。
逆に、選択肢5の構造をいくらクルクル回しても、絶対に選択肢1~4にはなりません。RS配置は構造をクルクルするだけでは変わりませんので。
次に、選択肢1~5全てに共通する重要用語があります。今回のように“不斉中心があってRS配置がつけれる”化合物(分子内対称面が存在しない)は「キラルな化合物」と言います(重要な例外あり。第7回で)。
逆に“不斉中心がなくRS配置がつけられない”化合物(分子内対称面が存在する)は「アキラルな化合物」と言います(例外あるが重要度低い)。よって、今回の選択肢1~5は全てキラルな化合物と言えます。
さらにいきます。注目(わかりやすいもの)は選択肢4と5です。この2つの化合物を見ていると、何かを感じないでしょうか???
そうなんです。4と5の間に鏡があるとすると、丁度鏡写しの関係になっているんです。
この素敵な関係のことを何と言ったでしょうか。
・・・
そうですね!このような関係を「エナンチオマー」と言います。
ということは、選択肢1~3と選択肢4は同じ化合物なので、「1と5」「2と5」「3と5」もエナンチオマーですね。
あと、気づいた方いらっしゃると思いますが、エナンチオマーの関係にあると、絶対にRS配置が逆になります。鏡に映ると反対になるんです。
だから、もし選択肢1~3と選択肢5の関係がエナンチオマーとすぐ判別できない場合(構造をクルクルできない場合)、RS配置を決めれば判断しやすくなります。
ちなみに、RS配置(立体配置)が異なるので、エナンチオマーの関係を「立体配置異性体」と言ったりします。似た言葉に「立体配座異性体」ってのもあってややこしいのですが、たまに出題されるので第8回で少しだけふれます。
また、エナンチオマーという関係が存在するのは「キラルな化合物」だけです。「アキラルな化合物」にはエナンチオマーが存在しません。
さらに笑
選択肢4と5のようなエナンチオマーの関係にある化合物が1:1で混ざっている(等量混合物)状態をラセミ体と言いますよ☺
まとめ
いかがでしょうか。この辺りの関係性があやふやなままだと問題が解けませんので、整理しておきましょう。
初回はここまでにしましょう。
次回以降も問題使いながら、
①不斉炭素を見つけてRSがつけられる
②言葉の定義がわかる
③様々な立体構造の表し方
をポイントとして一緒に学んでいきましょう。
長時間お疲れさまでした。
コメント