【全8回】薬剤師国家試験の化学勉強法 立体 初めの一歩(第6回)

化学編

いつもブログをご覧いただきありがとうございます。

勉強法第6回となりました。

本日から「立体化学」に突入します。

第2回でお伝えしましたが、立体化学も頻出(というか出題率100%)範囲です。

ポイントは以下の3点でしたね:-P

①不斉炭素を見つけてRSがつけられる

②言葉の定義がわかる

③様々な立体構造の表し方

頭の中で立体構造をクルクル回転させて問題が解ける方は、②を押さえておけば終了でしょう。
しかし、「手前?奥??単結合を回転???ムリ~~~」となる方は、かなり厳しい戦いになります・・・

しかしながら、そういった方でも、問題を解く時間が少しかかりますが、①の「RSをつける」ということと、③の「構造の書き換え」という2点を徹底することで、「頭の中でクルクルする」という作業を極力減らすことが可能です。

手強い範囲ではありますが、内容を超厳選して立体最重要内容を3回で終了させますので、一緒にがんばりましょう!

不斉中心を見つけましょう

まずはこちらの問題です。

第103回問7です。

「こんな問題出来るに決まってるでしょう」となる方がほとんどだと思います。たしかにこれを国家試験本番で“誤答”するのはもったいない完全なサービス問題です。

ただ、この問題を使って学べる点は多いです。ゆっくり進んでいきましょう。

初めに、問題文にある「不斉中心」という言葉は大丈夫でしょうか?

・・・

大丈夫ですね!

“不斉中心=4方向に別の構造が結合した原子(主に炭素原子)”です。

なお、国家試験では基本的に不斉“炭素”しか出ません。炭素以外で過去に出題されたのは不斉“硫黄”です(100回のオメプラゾール、109回のスリンダク)。
硫黄は4方向のうち一つが“ローンペア”です☺医薬品添付文書の構造を確認すると「及び鏡像異性体」とあるため、R体S体が存在することが分かります!

不斉炭素の話に戻りますね☺一応、図にしておきます。

これくらいの構造なら問題ないのですが、複雑な構造になると不斉中心が見つからない時もありますので、ちょっと細かく見ます。

不斉中心になっているかどうか判断しにくい場合は、隣の原子を一つずつ追っていきましょう。違いがあれば「別の構造がある」ということになります。

【第105回の問9】イノシトールの立体化学
この問題は、薬剤師国家試験の立体化学に関する問題としてはちょっと珍しい内容です。言葉の定義を再確認しておきましょう。

RS配置を決めましょう

不斉中心が見つかれば、次にRS配置を決めます。

不斉中心は4方向に別の構造が結合しており、結合の仕方によって、立体的な違いが生まれます。それが「RS配置」です。R配置の構造はR体、S配置の構造はS体と呼ばれます。

RやSの決め方は、一般的に「自動車のハンドル」に喩えられます。ハンドルが右に回れば「R」、左に回れば「S」です。

この時、最初に決めなければいけないのが、不斉中心に結合している構造の“優先順位”です。1~4位まで順位をつけます。方法は「原子番号順」です。こんな感じ。

不斉中心を決める際の図に、少し付け足しました。優先順位は不斉中心にくっついている4つの原子の原子番号を確認し、原子番号が一番大きいものを1位、次が2位、その次が3位、最後が4位とつけていきます。

上の図では、緑枠のO(酸素)が1位、黄色枠のH(水素)が4位、そして青枠とオレンジ枠のC(炭素)が同順です。もし同順の場合は、次の原子に進むだけ。青枠の場合はH(水素)しかありませんが、オレンジ枠の場合はC(炭素)があるため、青枠が3位、オレンジ枠が2位ということになります。

では、ここで決めた優先順位からRS配置をどのように決めるかです。

構造の破線(‐‐‐‐‐)は奥に伸びている結合です。図のように、優先順位4位を奥(破線)に置いた時、残りの1~3位が右回りなら「R配置」、左回りなら「S配置」です。これが基本です。

では、優先順位4位が奥(破線)ではない場合はどうでしょう。

ここからは本来、「頭の中でクルクル問題」が発生してくるのですが、機械的にいきます。

先ほどと同様に優先順位をつけると、4位が手前(太線(以下くさび))にあり、残りの1位~3位が右回りです。この時、ハンドルに見立てるとすると、4位を奥(破線)に持っていく操作(頭で構造をひっくり返す)が必要になります。

これが難しい場合は、“4位が手前(くさび)の場合、1位~3位が右回りは「S配置」、左回りは「R配置」”と機械的に覚えておきましょう。手前と奥をひっくり返すので、結果が逆になるわけです。

では最後に、優先順位4位が奥(破線)でも手前(くさび)でもない時(すなわちただの棒線で書かれている時)、どうしたら良いでしょうか。

この場合は、基本的に構造をクルクル回す必要が出てきます。
しかし、国家試験は易しさなのか何なのか、基本的に優先順位4位が手前か奥にある場合しかRSを聞いてきません(ゼロではないです。以下の記事参照)。もしくはRSを求めなくても回答が出せる問題になっています。

【薬剤師国家試験】RS配置のつけ方 少しレベル高いやつ
薬剤師国家試験のレベルとしては、少しレベルが上がるRS配置に関する問題を取り上げます。使えるテクニックもご紹介します☺

それでは第103回問7をもう一度確認します。

同じように優先順位をつけてRSを決めると、選択肢5のみ「R配置」ということがわかります。

解答出ましたのでとりあえずOKなんですが、せっかくなのでこの問題を使って他の重要点も確認しましょう!

RS配置から何がわかるか

この問題では、選択肢1~5の不斉中心に結合している構造は同じです。さらに、不斉中心の立体配置が、選択肢1~4は「S配置」、選択肢5のみ「R配置」ですから、選択肢1~4は全て“同じ化合物”選択肢5のみ“立体配置が異なる化合物”と言えます。

「え!選択肢1~4が同じ化合物ですか????」

と思われた方、そうなんですよ。“頭の中で構造クルクル”すると、全部一緒なんです。
なので、この問題が“R配置どれ?”ではなく“異なる化合物どれ?”みたいな問題だと、解けない人出てくるかもしれないですね。
逆に、選択肢5の構造をいくらクルクル回しても、絶対に選択肢1~4にはなりません。RS配置は構造をクルクルするだけでは変わりませんので。

次に、選択肢1~5全てに共通する重要用語があります。今回のように“不斉中心があってRS配置がつけれる”化合物(分子内対称面が存在しない)は「キラルな化合物」と言います(重要な例外あり第7回で)。
逆に“不斉中心がなくRS配置がつけられない”化合物(分子内対称面が存在する)は「アキラルな化合物」と言います(例外あるが重要度低い)。よって、今回の選択肢1~5は全てキラルな化合物と言えます。

さらにいきます。注目(わかりやすいもの)は選択肢4と5です。この2つの化合物を見ていると、何かを感じないでしょうか???

そうなんです。4と5の間に鏡があるとすると、丁度鏡写しの関係になっているんです。
この素敵な関係のことを何と言ったでしょうか。

・・・

そうですね!このような関係を「エナンチオマー」と言います。

ということは、選択肢1~3と選択肢4は同じ化合物なので、「1と5」「2と5」「3と5」もエナンチオマーですね。

あと、気づいた方いらっしゃると思いますが、エナンチオマーの関係にあると、絶対にRS配置が逆になります。鏡に映ると反対になるんです。

だから、もし選択肢1~3と選択肢5の関係がエナンチオマーとすぐ判別できない場合(構造をクルクルできない場合)、RS配置を決めれば判断しやすくなります。

ちなみに、RS配置(立体配置)が異なるので、エナンチオマーの関係を「立体配置異性体」と言ったりします。似た言葉に「立体配座異性体」ってのもあってややこしいのですが、たまに出題されるので第8回で少しだけふれます。

また、エナンチオマーという関係が存在するのは「キラルな化合物」だけです。「アキラルな化合物」にはエナンチオマーが存在しません。

さらに笑

選択肢4と5のようなエナンチオマーの関係にある化合物が1:1で混ざっている(等量混合物)状態をラセミ体と言いますよ☺

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まとめ

いかがでしょうか。この辺りの関係性があやふやなままだと問題が解けませんので、整理しておきましょう。

初回はここまでにしましょう。

次回以降も問題使いながら、

①不斉炭素を見つけてRSがつけられる

②言葉の定義がわかる

③様々な立体構造の表し方

をポイントとして一緒に学んでいきましょう。

長時間お疲れさまでした。

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