皆様こんにちは:-P
薬剤師国家試験の化学における立体化学の重要性と一番基本的な内容は別のブログで発信済ですが、とっても大事な範囲なので、いくつか補足記事を作成しておきます。
参考にしてください☺
本日は過去問を1つ解説します
第105回の問9です。
キラルとアキラル
キラルとアキラルの定義を確認しておきます。
不斉中心 | 分子内対称面 | 光学活性かどうか | |
キラル | 原則あり | なし (=鏡像と重ね合わすことが 出来ない) | 光学活性 |
アキラル | 原則なし | あり (=鏡像と重ね合わすことが 出来る) | 光学不活性 |
上表で“原則”とあるのは、一部例外があるからでした。国家試験で大事な例外は「不斉中心があるアキラル=メソ体」です。
過去数十年の国家試験において、キラル・アキラルに関連する問題は、原則として不斉中心の確認から進めていけば解決できてます。
ただ、たまに違う考えが必要なものが出てきます。それが第105回の問9です。
不斉中心の有無と分子内対称面
再度問題を載せます。
「キラルなのはどれか」と聞かれているので、国家試験的にはとりあえず不斉中心がある化合物を探してRSを確認するのが基本です。なぜなら、RS配置を確認することで、メソ体を発見したり、(今回は必須問題なので関係ありませんが)他の選択肢の解答に必要な情報を得られたりするからです。
ただ、今回の問題は(国家試験的には)ちょっと特殊です。
例えば選択肢1を見てみます。
赤丸の炭素にRSがつけられるかどうかを確認すると、結合しているのは「-OH(黄色四角枠)」「-H(緑四角枠)」「オレンジ枠」「青枠」です
RS配置を決める際の優先順位の決め方を思い出していただきたいのですが、基本的に原子番号に差がある部分まで順番に辿るんでしたね。
すると、オレンジ枠と青枠は以下のように結合している原子に差がなく、最終的に合流します。
よって、RSはつけられません。
実はイノシトールの立体化学は特殊で、通常(国家試験レベルの範囲)の順位決めはできません。
ただ、国家試験で大事なのはそこではなく、忘れてはいけないのが最初の表です。
不斉中心 | 分子内対称面 | 光学活性か | |
キラル | 原則あり | なし (=鏡像と重ね合わすことが 出来ない) | 光学活性 |
アキラル | 原則なし | あり (=鏡像と重ね合わすことが 出来る) | 光学不活性 |
アキラルな化合物には「分子内対称面が存在する」です。
実は、立体化学のキラル・アキラルの定義としてはこの「分子内対称面の有無」が重要なんです。
ただ先ほども述べたように、薬剤師国家試験の問題を解く際には不斉中心を最初に考えたほうが、メソ体を発見したり、他の選択肢の解答に必要な情報を得られたりできます。
そして何より化合物の分子内対称面の有無を判断するってかなり難しいです。
例えば、以下の化合物で分子内対称面の有無をさっと判断できるでしょうか。
これはメソ体の酒石酸なので、分子内対称面があります。結合を回転させて判断する必要があるため、立体が苦手な方は少し苦労します。
よって、薬剤師国家試験の問題を解く際は「不斉中心」から考えることが良いと思っています。
もちろん化学が“苦手な方は”ですよ☺
第105回問9の解説
では解説します。
まず「キラルなのはどれか」と聞かれているため不斉中心を確認しましたが、判断が出来ませんでした。
では次に何を考えるかというと「分子内対称面の有無」です。
このようになります。
先ほど「分子内対称面の有無を判断するのは難しい」とお伝えしましたが、このような“環構造(今回はシクロヘキサン)”の場合は、結合の回転が不要なので判断しやすいと思います。
よって、キラルなのは分子内対称面が存在しない“選択肢4”です。
まとめ
繰り返しになりますが、薬剤師国家試験における、キラル・アキラルに関連する問題の解法としては、不斉中心の有無確認から進めるのが基本です。
ただ、定義として“分子内対称面の有無”があることを忘れないようにしましょう。
今回の問題は、分子内対称面を考えなければならないという、薬剤師国家試験の問題としてはちょっと珍しい内容でした。
では、お疲れさまでした:-P
コメント