皆様こんにちは:-P
本日は薬剤師国家試験第98回問215について解説を行います。これです。
なぜ急にこの問題を取り上げるかというと、薬剤師国家試験の中でも重要なキーワードである
「加水分解」
に関する問だからです。
まずは「加水分解」の整理を行います☺
国家試験で大事な「加水分解」3選
皆様は加水分解というと何を思い浮かべるでしょうか。
「エステルの加水分解」という方もいらっしゃるでしょうし
「アミドの加水分解でしょう!」とおっしゃる方もいますかね。
どちらも正解で、そしてどちらも超重要です。
ここで薬剤師国家試験における重要加水分解反応を列挙しますと
①エステル、アミドの加水分解
②アセタールの加水分解
③イミン(エナミン)の加水分解
こんな感じです。
全部大事ですが、あえて重要度に差をつけると①>②>③ですね。(全部重要ですけど)
なんかたくさんあってややこしそうに見えますが、国家試験における上記3分類の加水分解については、これだけを覚えておいてください。
合成の逆反応
加水分解の反応機構はそこまで重要ではありません。
重要なのは「加水分解が起こる構造」と「結果」です。
例えば皆様が加水分解と聞いて思い浮かべたエステルの加水分解であれば、重要なのは
「加水分解が起こる構造」→エステル
「結果」→カルボン酸とアルコール(ヒドロキシ基)になる
ということ。表にします。
加水分解が起こる構造 | 結果 |
---|---|
エステル | カルボン酸+アルコール |
アミド | カルボン酸+アミン |
アセタール | アルデヒド・ケトン+アルコール ※糖類:ヘミアセタール+アルコール) |
イミン | アルデヒド・ケトン+1級アミン・アンモニア |
エナミン | アルデヒド・ケトン+2級アミン ☺重要度低いよ☺ |
もう1分子のグルコースの4位OHをアルコールと考えていただければ結構です。
合成反応の機構を全て説明すると長くなるので省略しますが、例えばエステル合成は
のように、合成時に脱水反応を伴います。
よって、エステルに水を加えると元に戻る反応が起こります。これが加水分解です。
合成の逆反応
ですね。
実はアミドもアセタールもイミンもエナミンも全て「合成時に脱水反応」を伴います。
したがって、水を加えると元に戻るわけです。
国家試験での加水分解の問われ方
まずは加水分解が起こる構造とその結果について確認しました。
これは国家試験では出題頻度も高く、かつ解答しやすい問題が多いところです。
たとえば以下のような問題が代表例です。99回の問題ですね。
平易な問題ですが、こういったタイプの問題は国家試験では頻出です(本問では加水分解後の結果までは問われていません)。
この例のように、加水分解はプロドラッグ等の医薬品に絡めた出題がしやすいため、出題頻度が高いです。
例えばβ-ラクタム系抗菌薬の話にも関連してますよ☺
98回 問215はどう考えるか
では記事の表題にもなっている98回問215を見てみます。
この問題を解く際に重要なキーワードが2つあります。それは
・加水分解
・ホルムアルデヒド
です。
加水分解したときにホルムアルデヒド(アルデヒド)が生成する可能性があるものは何だったか?というと、アセタール、イミン、エナミンです。
※なお、エナミンを加水分解してホルムアルデヒドが生成することはありません。余裕があればご自身でエナミンの合成反応を確認してみてください。エナミンは国家試験ほぼ出ませんので軽くで良いです。
よって可能性としてありそうなのは“2(イミン構造あり)”ですが・・・
イミンの加水分解を考えるとこのようになってしまい、ホルムアルデヒドは生成しそうにないです。
ってことで手詰まりになってしまうのですが、皆様はぜひこちらを覚えておいてください。
アセタールの酸素原子を、類似した元素である窒素に変更(この場合、アミナールと言います)しても、同じ反応が起こります。
そうすると、考えるべき選択肢がもう一つ増えます。
選択肢5の構造が、まさに“アミナール”構造です。
よって、98回問215の答えは5となります。
まぁ激ムズ問題ですが、考え方はめっちゃ大事です。
まとめ
お疲れさまでした。
今回は“反応”に焦点を当てましたが、反応といっても機構ではなく結果が重要な部分です。
加水分解が起こる構造とその結果、また“合成の逆反応”という考え。
これらを覚えておけば解ける過去問が山ほどありますし、皆様が受験予定の国家試験にも何らかの形で必ず関わってきますよ。
反応が嫌いな方も、これくらいなら何とかなるのではないでしょうか?
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