【酸性度の疑問】フェノールって共鳴するのに弱い酸なのは何故?

化学編

皆様こんにちは:-P

本日はタイトル通りです。

酸性度を勉強する際に、一度は疑問に思うこと。

「共鳴たくさん書けたら酸って強いんですよね?何でフェノールは弱い酸なん?」

この疑問は、共鳴や酸性度を学習すると必ず出てくるものです。

今回はかなり難しい話になるので、気合を入れて読んでいただきたいと思います。

大前提として以前のブログの内容は理解した状態で進んでください(;_:)

さっそくフェノールの酸性度を考えてみます。今回はカルボン酸との比較をしながら進めますね。

フェノールの酸性度を考える

酸性度なので、プロトンを外した共役塩基の安定性を考えましょう。

今回は共役塩基のマイナスを共鳴で安定化させるパターンです。

共鳴を書いてみると・・・

たくさん共鳴構造が書けました!

共鳴して共役塩基が安定化されるため、共役塩基が全く共鳴しないアルコールよりは酸が強いです。

では、フェノールとカルボン酸を比較するとどうでしょうか?

カルボン酸とフェノールを比較する

カルボン酸(酢酸)の共役塩基の共鳴は以下です。

これだけです。共鳴構造が少ないです。

では、フェノールのほうが共鳴構造が書けるから、酸の強さは

フェノール>酢酸

でしょうか???

・・・

違いますよね!酸の強さは

酢酸>フェノール

なんです。

「共鳴がたくさん書けたら共役塩基が安定だから、酸が強いのでは?」

これは正しい考えです。

しかし、共鳴の数が多いだけで、安定性が決まるわけではありません。

薬剤師国家試験のレベルで、考え方を整理しておきましょう。

共鳴の数と酸性度

先ほどもお伝えしたように、「共鳴の数が多い=より安定」の考え方は正解です。

ただし、共鳴すれば何でも良いかというと、少し違います。

もう一度、フェノールの共役塩基と酢酸の共役塩基の共鳴構造を確認してみます。

この2つの違いが分かるでしょうか。

フェノールの共役塩基の共鳴構造はたしかに数が多いです。しかし、共鳴する電子(マイナス)が移動しているのは「炭素」の上です。

一方、酢酸の場合は「酸素」の上に電子がきます。

ここで思い出していただきたいのが「電気陰性度」です。これは電子を引っ張る力で、すなわち電気陰性度が大きい原子は電子が欲しい原子です。

炭素は電気陰性度が小さく、電子が欲しくありません。それなのに、フェノールの共鳴構造は、電子が炭素上にあるものばかりです。要するに安定性が“それほど”高くないということです。

酢酸の場合は、共鳴により酸素上に電子があります。酸素は電気陰性度が大きく、電子が欲しい原子なので、この共鳴により非常に安定性が高まります

このように、共鳴というのは、ただ数が多いというだけで安定性が決まるものではありません。電子がどの原子上を動くかということも大切な要素です。

さらに、今回は“ベンゼン環”が共鳴しています。

皆様はすでにご存じだと思いますが、ベンゼン環のような芳香族化合物は“安定”でした。(芳香族性も復習しましょう

でも、フェノールの共鳴構造をみてください。

安定なベンゼン環が壊れています。せっかく安定な芳香族化合物ではなくなっているため、安定性が下がってしまいますよね。

よって、フェノールと酢酸の酸の強さを比較すると・・・

フェノールの共役塩基は

①共鳴構造の電子が炭素上にある

②安定なベンゼン環が壊れている

という理由から、安定性がそれほど高くありません。

したがって、酸の強さは

酢酸>フェノール

となります。

国家試験では

以前のブログでもお伝えしましたが、共鳴を考える酸性度の問題は出題頻度低めです。しかし、このレベルが解けるようになると、他の受験生に差をつけることができます。

99回問105です。なかなかの難問ですが、共鳴による安定性を考えながら見てみましょう。(選択肢5,6に絞って説明します)

プロトンが外れた共役塩基の安定性を確認します。

共鳴を書くと

6からプロトンが外れた共役塩基の共鳴は、炭素上に電子(マイナス)がくる共鳴構造しか書けません。

5からプロトンが外れた共役塩基の共鳴は、炭素上に電子(マイナス)がくる共鳴構造もありますが、さらに酸素上に電子(マイナス)がある構造も書けるため、安定性が高そうです。

ちなみに今回の問題の場合は、単純に共鳴構造の数で比較してもOKです。ベンゼン環の共鳴が出てくるときは、数だけで判断はダメです!

よって、酸性度が一番高いHは5となります。

まとめ

今日は薬剤師国家試験の中では難易度が高い部分を説明しております。ただ、出題頻度は高くないため、余裕が出てくれば触れるとよいです。

難しい話だったと思いますが、大事なことだけまとめておきます。

・共鳴構造が多いと安定(一般論)

・共鳴した電子(マイナス)がどの原子上にあるかを考える

・ベンゼン環の共鳴は“数”だけで判断してはいけない

これらの考えを頭に置いて、今日のブログで説明した「フェノールと酢酸の比較」「99回問105」を復習してください。

国家試験にあまり出題されていないため、まずはここまでで出来ていれば大丈夫です。

ここまで読み切った皆様、さすがです!お疲れさまでした☺

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