【薬剤師国家試験】“生体分子・医薬品の相互作用” その1

化学編

皆様こんにちは:-P

暖かくなってきましたね。

今日は最近の国家試験でよく見かける「生体分子・医薬品の相互作用」の問題について取り上げます☺

どのような問題を指すかというと、例えば第108回の

こういうやつです!

反応の問題ではありますが、そのメカニズムを少し細かく問うタイプの問題です。

総合力が必要となり、難易度は高いです( ゚Д゚)

理解するのに時間がかかると思いますが、問題を使って大事な部分をお伝えしていきますので、一緒にがんばりましょう☺

大事なポイントは?

総合的な力が試されるため、「これだけ押さえる!」というのはかなり難しいです。

あえて絞るなら、ポイントは以下3点です。

①全て理解は難しい!消去法が前提

問題を見ていただければわかりますが、けっこう難しい選択肢が出てきます。

選択肢1から全て正誤を判断するのは厳しいです。

最初から“消去法”で解くことを前提に、分かる選択肢から削っていきましょう☺

②骨格やアミノ酸などの生体成分の構造(特徴)は覚える

骨格や生体成分の構造を知っていないと正誤の判断が出来ない選択肢があります。

これは覚えるしかありません。生物や薬理でも必要になるものが多いため、国家試験の勉強を進める中で少しずつ頭に入れていきましょう:-P

③言葉の定義(意味)と構造を結び付ける

上で紹介した第108回問107の選択肢1

「アスパラギン酸残基アと水の相互作用は、水の酸素原子の求電子性を高めている。」

このような文章の意味が理解出来るかです。

どういった相互作用(反応)が起きて、水の状態はどうなっているか、ということを構造から判断する必要があります。

繰り返しになりますが、幅広い知識必要です!

①~③を念頭に、実際に問題を使って問われている重要事項を一つずつ一緒に見ていきましょう:-P

第105回 問106

さっそく始めましょう:-P 今日は第105回の問題です!

問題全体の把握

アセチルコリンの代謝に関する問です。衛生や薬理の内容も含まれていますね☺

このタイプの問題は、問題文に色々なヒントが書いてあることが多いため、しっかり読みましょう:-P

今回は「アセチルコリンエステラーゼ」や「加水分解」というワードが出てきているため、「エステルの加水分解」が問われていそうですね☺

では図を見てみると・・・

たしかに、エステル結合が切れて、アルコールになってます☺

ここで「おや?」と思った方!

エステルの加水分解は「アルコール」と「カルボン酸」が生成するのでは?

【薬剤師国家試験】重要反応“加水分解”
薬剤師国家試験化学の中でも難易度が高い問題の1つである「98回問215」について、関連事項を整理しながら解説します。

実は問題文にもあるように、この図は反応の“初期段階”のため、その後は次のような反応が進みます。

ちゃんとカルボン酸生成します☺

反応をまとめると結局は以下のようになります。

この単純なエステルの加水分解も、実は生体内では色々な化合物が関わっているんですよ~というのが今回の問題です☺

選択肢1

「グルタミン酸―ヒスチジンの相互作用により、ヒスチジンのイミダゾリル基の塩基性が高くなる。」

難しそうなことが書いてありますが・・・

グルタミン酸(Glu)とヒスチジン(His)の相互作用はここです。

この時、ヒスチジンのイミダゾリル基(イミダゾール環)の塩基性が高く(強く)なっているか?と聞かれています。

イミダゾールの塩基を示す部分は、右側の窒素ですよね☺

【全8回】薬剤師国家試験の化学勉強法 “塩基”の強さ比較(第5回)
今回は「塩基」の説明です。「酸」より少しボリュームがありますが、その分出題頻度も高い内容なので、一緒に頑張りましょう。

では、Gluのカルボキシレート(-COO)により、イミダゾールの水素が引っ張られるとどうなるでしょう。

イミダゾールのHがGluの⊖に引き付けられて、イミダゾールがよりマイナス状態(電子豊富)になっています!すなわち塩基性が高くなっているということです☺

選択肢1は「正」です。

選択肢2

「グルタミン酸―ヒスチジン―セリンの三つのアミノ酸残基間の相互作用によって、セリンのヒドロキシ基の求電子性が高くなる。」

次はセリンのところまで話が進んできました。

この選択肢を考えるには、アセチルコリンエステラーゼによる加水分解の初期段階で、どういう反応が進行しているか考える必要があります。それが下です。

いわゆる求核置換反応です。また、このような“エステル”から“エステル”が生成するようなものは「エステル交換反応」とも言われます。

すなわち、この反応においてセリン(Ser)のヒドロキシ基は「求核剤」として働いています。

ちなみに求核剤とは“核(プラス)を求めるもの”なので、マイナスの性質を持つものです:-P

この時点で解答は「誤」ですね。求核剤なので、反応を進めるには“求核性”を高める必要があるからです。

では実際に求核性が高まっているのか確認してみますね!

選択肢1と同じ考えで、塩基性が高くなったイミダゾールに、ヒドロキシ基の水素が引っ張られ、酸素がよりマイナス状態になっています。すなわち求核性が上がっています

選択肢3

「アセチルコリンはトリプトファンとイオン結合している。」

これは、アミノ酸の構造が分かれば判断できます☺

トリプトファン(Trp)の側鎖はインドールです。

Trpの側鎖であるインドールは酸性も塩基性も示しにくい構造です。そのためイオン結合は形成しません。

よって選択肢3は「誤」です。

選択肢4&5

「AChE 阻害剤Aはセリンのヒドロキシ基を不可逆的にアミド化する。」
「AChE 阻害剤Bはセリンのヒドロキシ基を不可逆的にリン酸化する。」

これらは、薬理や衛生でも学ぶ内容ですね☺

Aはネオスチグミン臭化物、Bはサリンの構造です。

理由付けは可能ですが、結果としてAは“可逆的”、Bは“不可逆的”と覚えておかなければ正誤の判断厳しいと思います。

選択肢4は「誤」、選択肢5は「正」です。

最後に

お疲れさまでした:-P

このタイプの問題は、持っている知識をフル活用して、選択肢を削っていく必要があります。難しいです・・・

ただ、似たような選択肢も出題されています。

次回以降も、問題を使って選択肢ごとに考え方をお伝えしますので、少しずつ知識を整理していきましょう☺

【薬剤師国家試験】“生体分子・医薬品の相互作用” その2
今回取り上げる問題は「第106回 問106」です!近年の国家試験で出題が続いている相互作用の関する問題を、大事な点に絞って解説します。

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