皆様こんにちは:-P
本日は立体化学の問題で出題される「性質」についてさくっと復習します☺
性質というのは例えば
融点は同じ?
とか
比旋光度の絶対値は同じ?
というやつです。
キラル・アキラルやエナンチオマー・ジアステレオマーの判別が出来れば解答可能なため、出題されたらラッキーです。
まずは大事なポイントを整理します。
性質の違い
この前提が重要
エナンチオマー | ジアステレオマー | |
---|---|---|
物理化学的性質 | “原則”同じ | 異なる |
生物学的性質 | 異なる | 異なる |
医薬品の作用が代表例で、一般に同じ医薬品でもR体とS体で作用が異なります。
まず「ジアステレオマー」は全く違う化合物なので、性質も全然違います。
次に「エナンチオマー」は鏡像異性体なので、似たもの同士で原則同じです。例えば、融点やNMRスペクトルなどが同じです。
しかし、エナンチオマーに関して唯一“異なる”性質があります。それが「旋光度」です。
エナンチオマーと旋光度
言葉とともに重要事項を整理しましょう☺
旋光性:光を回転させる性質
右に回転→右旋性、(+)体、d体
左に回転→左旋性、(-)体、ℓ体
R体が右旋性、S体が左旋性などの相関はありません(どちらに回転するかは測定しなければ分からない)。ただし、ある化合物のR体が右旋性であれば、そのエナンチオマーであるS体は左旋性です。
光学活性:旋光性を示すこと
旋光性と同じ意味とお考えください。
キラルな化合物は光学活性、アキラルな化合物は光学不活性でしたね☺
旋光度:旋光性を示す物質が光を回転させた時の“角度”
例えば
ある化合物のR体が光を右に10度回転させるなら、旋光度は「+10°」です。
そのエナンチオマーであるS体は光を左に10度回転させるため「-10°」です。
これを国家試験では「符号(+と-)は逆で、絶対値(10のこと)は同じ」と表現してきます。
比旋光度:光が回転する角度を物質同士で比較するために旋光度を物質固有の値に変換したもの
旋光度だと条件によりバラつきがでるため、決まった条件を設定して比較しやすくした値です。
よって、比旋光度もエナンチオマーでは「符号は逆で絶対値は同じ」です☺
大事なポイントはこれくらいです!
なお、旋光度や比旋光度に関する計算や仕組みは【物理】の範囲です。【化学】では上記内容が分かれば十分です☺
では問題を使って最終チェックしましょう:-P
問題演習
2題いきます!
まずは106回の問8です。
性質の問われ方は古い過去問からずっとこんな感じです:-P
さっそく解答に進みますね~
選択肢1:Aが右旋性(+)かどうかを聞いていますので、リード文にある通り「正」です。
選択肢2:Aとその鏡像異性体(エナンチオマー)Bの融点が同じか聞いています。エナンチオマーの性質は原則同じでした。よって「正」です。
選択肢3:「ラセミ体」の定義を問う問題です。エナンチオマーの等量混合物をラセミ体と言いますので「正」です。
別記事も参照してください:-P
選択肢4:今回のキーポイントですね!エナンチオマーの関係にある場合、比旋光度は「符号は逆で絶対値は同じ」です。「正」です。
選択肢5:A、B以外に立体異性体が1つ存在するため「誤」です。
※簡単に解説しておくと、酒石酸には不斉中心が2つあるため、考えられる立体異性体は
(R,R)(S,S)(R,S)(S,R)
の4つです。
ただ、(R,S)はメソ体なので、エナンチオマーが存在しません((R,S)と(S,R)は同じ化合物)。
よって立体異性体はA(R,R)、B(S,S)と、残り1つメソ体(R,S)です。
メソ体については別記事も参考にしてください☺
http://shikakumedfood.com/chem7/
では次もいってみましょう!
次は107回の問8です。
まずはキニジンとキニーネの関係性を考えます☺
とりあえず選択肢3は「誤」ですね!立体配置が異なる関係なので“立体異性体”です。
ではどういう関係か?全部R,Sを出しても良いですが、それは参考書に任せるとして・・・
赤丸の立体に注目!立体変わってないです!
もしエナンチオマーなら全てのR,Sが逆になるはずなので、キニジンとキニーネの関係は“ジアステレオマー”です☺
よって選択肢1が「誤」、選択肢2が「正」です。
あとは選択肢4も選択肢5も大丈夫ですね:-P
ジアステレオマーは全部違いますので、どちらも「誤」です。
まとめ
いかがでしたか?
立体の性質に関する問題は、1つ答えが分かると他の選択肢も削ることができるので、出題されたらラッキーな問題です!
まずはキラルやエナンチオマー、メソ体などの重要事項を押さえた上で、性質はこの記事で書いたポイントだけ確認しておけば大丈夫です:-P
ではまた~☺
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